突然ですが、ACC(アダプティブクルーズコントロール)という機能をご存知でしょうか。最近のクルマについてくるADAS(先進安全運転支援システム)に含まれる機能のひとつですが、ACCは前走車を追従するクルーズコントロールのことです。
緊急自動ブレーキや、歩行者検知、ペダル踏み間違い抑制など、ADASにはさまざまな安全機能が備わっています。しかし、日頃から安全運転を心がけている人にとっては、あまり機能する場面に遭遇できない装備ともいえます。しかしACCだけは、普段の運転時から使える機能ですので、疲労の軽減という点で大いに役立ちます。そんなACCを使いこなして、休日のドライブを快適に過ごせるよう、今回は使い方の手順を解説します。
■手順は基本ツータッチの簡単操作
ACCはいまやどこのメーカーのクルマにも装着されている、現代のクルマには必須の装備ともいわれています。ADASと同じ安全装備ということもあり普及も早かったのですが、それと並行して各社操作スイッチのマークに統一性があることも、操作がしやすい点だといえるでしょう。
ACCのスイッチ操作は必ず走行中に行うことになります。そこで、まずはステアリング上、あるいはステアリングコラムレバーなどの操作スイッチ位置をしっかりと把握しておきましょう。どこに何のスイッチがあるか、早く覚えることがACCを使いこなす第一歩です。
メインスイッチはメーターのような絵のマークを使用するメーカーが多くなっています。こちらは停止中でも操作可能です。走行中でも、どちらでも構いませんのでまずはこのスイッチでACCを作動させスタンバイ状態にしましょう。
大概のクルマは、ACCのスタンバイ状態になるとメーター内に表示が現れます。画面全体が大きく変わるクルマもあれば、メーターパネルの隅っこに小さく表示する場合、またフロントガラス方向のヘッドアップディスプレイ(HUD)に表示される場合もあります。そしてこれらの表示は、この後ACCを作動させると、表示色が変わったりして作動状況を伝えてくれる部分でもあります。メーター内のACC表示は、必ず確認するようにしましょう。
さあ、ここからいよいよACCを使っていきます。走行していき、このスピードで継続走行したいというスピードまで到達したら、ACCスイッチの「SET」ボタンを押します。これでACCの作動操作は終わりです。ブレーキペダルを踏む、もしくはキャンセルスイッチを押さない限り、設定スピードでクルマは走り続けます。
ACCで走行中、アクセルやブレーキからは足を離しても大丈夫ですが、もしものときのためにブレーキはすぐに踏めるようスタンバイしておきましょう。足のペダル操作が少なくなるだけで、特にロングドライブ時の疲労はかなり軽減されます。
■車間距離を設定する
前走車を追従するクルーズコントロールがACC。当然前のクルマとの距離を設定する必要があります。距離は3段階以上で設定できるクルマがほとんどで、自分の好みで設定しましょう。このスイッチは、メーカーによって表示がバラバラですが、最近はひとつのスイッチで押すたびに距離を変えていくスタイルが主流です。こちらも走行中に操作することになりますので、位置を覚えておきましょう。
一部メーカーでは、物理スイッチではなくセンターディスプレイ内の操作で設定するクルマも見うけられます。こちらは走行中にも操作はできるようになっていますが、ディスプレイを注視しすぎないようにしましょう。
■悩みどころのスピード設定
ACCは、走行中にクルージング速度を変えることもできます。メインスイッチ近くの+/ーで表示された上下ボタンで設定する場合がほとんどですが、長押しとワンプッシュの2つの入力方法が用意されています。ただ、この操作の違いで速度の進みが1km/h刻みか、5km/hか、10km/hかは、メーカーごとに違います。ここは実際に操作して確認しましょう。
スピードは、単純に移動時間と燃費に関わってきます。スピードを上げれば時間は短く済みますが燃費は悪くなります。逆に少し時間がかかっても燃費重視にしたいときには、スピードを控えめに設定しましょう。
■ステアリングアシストがあるとさらに楽に!
ACCには、レーンキープのアシストも備えるクルマが増えてきました。これもメーカーや車種によりますが、車線のセンターをキープしてくれる機能がついていると、ロングドライブはさらに楽になります。基本、ステアリングホイールには手を添えているだけでよくなりますので、疲労軽減はさらに強く感じられるでしょう。
道路上の白線をカメラで検知するシステムがほとんどですので、カメラが機能できないときにはレーンキープが使えません。例えば大雨や雪、霧など視界の悪い状況ではほぼ使用不可になります。その際には、メーターに使用不可の警告が表示されます。
レーンキープのアシストは、クルマ側がステアリングを自動で操作する機能です。最初はハンドルを取られるような感覚があります。慣れが必要ともいえる機能ですので、違和感を感じたら無理に使うのはやめましょう。
■キャンセルとレジューム
ACCは設定すると、ずっと自動で走り続けます。キャンセル方法は必ず確認しましょう。キャンセル操作は、ブレーキを踏む、もしくはキャンセルスイッチを押すのどちらかです。この操作で、ACCの機能はすべてが一度キャンセルされ通常走行へと戻ります。とっさのときに使えるよう、キャンセルスイッチの位置は覚えておきましょう。
そしてACCは、一度キャンセルしても元の設定速度へ戻る機能も備えています。それが「RES」と表示されるレジュームスイッチです。SETスイッチの近くに配されていることの多いこのスイッチは、直前に設定してあった速度まで回復したいときに便利。ワンタッチで直前の設定まで速度回復します。レジュームで回復できる速度は、ACCのメインスイッチをオフにしない限り記憶されています。
■ほかにも見られる新機能
ACCは半自動運転として実用化され、年月を経て徐々に進化してきました。日産のプロパイロット2.0など、レーンキープの機能に周辺の他車検知機能を組み合わせ、自動で車線変更をしてくれる機能もここ最近で実用化されたシステムです。BMWなどでは、ACCの作動がツータッチではなくワンタッチへとさらに簡素化されてきました。
今ではADAS自体がクルマの必需品へと変わってきていますが、特にACCは一度便利さを知ってしまったら手放せなくなる装備といえるでしょう。高速道路での長距離移動時、そして行楽シーズンには付きものの渋滞時には、非常に役立つ装備です。
もしまだ使ったことのないようなら、ぜひ一度使ってみましょう。目から鱗の体験ができるはずです。ですが、ACCはあくまでも運転の補助装置。過信しすぎず、運転中は常に周囲への注意を怠らないようにしましょう。
<文=青山朋弘 写真=日産/ホンダ/青山朋弘>