アウディが送り出す究極のハイパフォーマンスコンパクト「RS3」。Cセグメントで933万円ものプライスタグを掲げる超高級車ですが、興味を持っている人が多い魅力的な1台でもあります。そのなかでも特に、購入しようか迷っている人には正直にいいます。RS3は「いま絶対に買っておいた方がいい」です。

RS3は、アウディのCセグメントハッチバック/セダン「A3」のハイパフォーマンスバージョン。A3や高性能版の「S3」とは比較にならない、アウディスポーツが手がけた最強・最速のコンパクト4WDスポーツカーです。今回はたまたま同じグループ会社でプラットフォームも共有する、「VW ゴルフR」との比較試乗ができたこともあり、改めてRS3の魅力を再確認できました。

◆アウディ流の熟成を体現した究極のコンパクト
Cセグメントのハイパフォーマンスカーは数あれど、ここまで操作系が滑らかで、きめ細かい操作感を持つクルマはほかになかなか見当たりません。同じセグメントですと、ホンダ シビック タイプRや、ルノー メガーヌR.S.、そしてゴルフRと、名だたる高性能車がそろいますが、RS3ほどの滑らかな操作感は、どのクルマも持ち合わせていません。

価格帯が確かに違いますので「当たり前だろ」と突っ込みたくなるでしょうが、メルセデスAMGや、BMWのMでも、正直ここまでのレベルが味わえるクルマにはなかなか出会えません。特にステアリングの操作感には、乗った瞬間に驚かされます。電動パワステとは思えないほど抵抗感の少ない、まったくザラザラ感がない操作感といえばわかりやすいでしょうか。

電動パワステの滑らかさでここまで驚いたのは、現行のND型ロードスター以来でした。どちらも共通するのは熟成モデルということ。どれだけRS3が完成されたプロダクトであるかを示す証拠でもあります。

アウディは、モデル末期に近づけば近づくほどよくなっていく例が多々見られます。最近でいうと、「Q2」にもその傾向が見られ、初期と比べると格段にクルマ全体がよくなっていたことに驚きました。アラが出切って完成形になるとでもいいましょうか。

今回のRS3は、2025年2月に投入された大幅アップデート版です。パワートレインやプラットフォームといった基本構造が変わらないため、熟成に力を注げているのでしょう。質感の高さをさらにアップさせてくる、アウディ流のマイナーチェンジ。このRS3でも存分に味わえます。
◆ピュアスポーツモデルでも乗り心地抜群!?
滑らかさが感じられたのは、乗り心地の点でも同じでした。試乗車にはオプションの電子制御ダンパー「RSダンピングコントロールサスペンション」が装着されていましたが、コンフォートモードで走れば至極快適。30や35の超低扁平のタイヤを履いているとは、微塵も感じさせない乗り心地のよさです。段差や継ぎ目などのショックも少なく、滑らかに凹凸をトレースしていくような感覚で走り抜けてくれます。

しかし一般道で快適に感じるのは、あくまでコンフォートモードのみ。ドライブモードを切り替え、ダイナミックにしてしまえばサスセッティングは締まり、即座にスポーツ走行モードへと変化します。明らかに路面のショックの伝わり方は過剰になりますが、高速走行などで安定感が増すと感じられるセッティングです。

サーキット走行にも対応する、さらに過激なRSモード(インディビジュアル/パフォーマンス)も備えていますが、こちらは公道向けではないかもしれません。よりダイレクト感が増しますので、長距離の走行などでは疲れてしまうでしょう。

◆二面性が恐ろしいほどハイレベル
伝統の直列5気筒ユニットは、400ps/500Nmを発揮。もう、Cセグメントなんていってる場合ではない、尋常ではない加速感を見せつけます。細かな操作にも即座に反応してくれるニュートラルさや、どこまでも曲がっていくかのようなコーナリング性能は、さすがRSモデル。操作に対して思った通りの反応をしてくれると、安心感につながります。首都高で普段通りに走っていても、いつの間にかいつもより高いスピードが出ていてアクセルを慌てて戻す、そんな場面もあったほどです。

刺激的な走りも楽しめる反面、普段の快適さもまったく損なわれていない。RS3の本当の魅力は、この二面性なのでしょう。その二面が恐ろしくハイレベルで実現されているのです。同クラスのコンパクトハッチバックではなかなか味わえない、プレミアムスポーツカーならではの魅力だといえます。

◆この魅力は知ってしまったら最後
冒頭にゴルフRと比較できたと書きましたが、今回乗った順番はゴルフR→RS3でした。正直、ゴルフRにだけ乗っていたとしたら、なんていいクルマなんだ! と感じて終わっていました。ゴルフRも、とてもよくできたクルマです。RS3は、知らなきゃよかったと思わせるレベルでした。

ゴルフRでは、RS3で感じるきめ細やかな操作感や乗り心地が、やはり不足していると感じられました。ここはネガティブな部分ではなく、しっかりとブランドの違いを表現している点を評価すべきです。シャシーは同じ「MQB Evo」を使用している、どちらも同じCセグメントのハッチバックなのですから。アウディはあくまでもVWの上位ブランド。よくて当たり前ですし、価格も高価です。ここは棲み分けがうまくできていると捉えるべきです。

RS3は、パワートレインもシャシーセッティングも、完全に熟成の域に達しています。もともと中古車市場でも非常に高い人気を誇るモデルであり、高額で取引されるクルマです。買っておいた方がいいと表現したのは、おそらくこの世代が100%内燃機関最後のRS3となると予想されるからです。

とはいえ、新車の販売価格が900万円を超える高価なクルマですので、あくまで購入できるならとの前提付きです。もしハイパフォーマンスのコンパクトカーを探しているのなら、いまRS3はオススメの筆頭にくるモデルだといえます。掛け値無しで、本当にいいクルマだと断言できます。将来的に価値が上がる可能性も秘めたモデルでもありますので、購入できるうちに手に入れることをオススメします。
<文&写真=青山朋弘>

















