マツダから3列シートの新型SUV「CX-80」の日本国内仕様が、2024年8月22日に初公開されました。ミニバンを生産していないマツダにとって、3列シートSUVは唯一のマルチパーパスカー。以前ラインナップしていた3列SUVの「CX-8」は、23年末をもって生産が終了していましたので、満を持して登場の後継モデルだといえます。車名の数字が2桁に増えましたが、中身はCX-8とはまるで違うCX-80。一体どのようなモデルなのでしょうか。
■CX-8に近いボディサイズ
CX-80は、どちらかというとCX-8よりも「CX-60」に近いクルマです。というのも、シャシーやパワートレインをCX-60と共有化しており、ボディの延長分を2列目以降のスペース確保に充てているという、ロングホイールベース版ともいうべき作りをしているからです。実際、フロントシート以前はCX-60とほぼ共通で、リアシート以後がCX-80専用。外装ではリアサイドドアが後席への乗降性重視のため長くなっているほか、リアクオーターウインドウの形状もガラス面積が増えて視認性を向上させています。
ボディの外寸を見てみると、CX-60と共通なのは全幅の1890mmのみ。あとはすべて違っています。全長4990mm(CX-60比+250mm)、全高1710mm(同+25mm)、ホイールベース3120mm(同+250mm)とそれぞれがサイズアップ。全高は、ルーフレールが付かないと1705mmになりますが、それでもCX-60よりプラスになっています。
ちなみに、先代型ともいえるCX-8のスリーサイズは全長4925mm×全幅1845mm×全高1730mmで、ホイールベースは2930mm。全高のみCX-80より20mm上まわっていますが、それ以外はすべてCX-80のほうが少々大きくなっています。一方で最小回転半径は5.8mと、CX-8とCX-80は同数値。全長5mにもおよぶボディや、3m越えのホイールベースなど数字だけ見ると大きく感じるCX-80ですが、CX-8とそこまで大きさは変わっていないので取り回しは懸念するほど違いはないと予想されます。
■7人乗りがメインではない
CX-60から大きく変わっているのは、やはり内装のリアシート2列目以降。まず2列目シートには、座席間にコンソールを設けた高級仕様のセパレートタイプ、コンソールをなくしウォークスルーを可能にしたキャプテンシート仕様、そして3人がけのベンチシートの3種類が用意されます。3列目シートは、2人掛けのゆったりとした作り。足元空間はそれほど広くもありませんが、CX-8に比べ空間は拡大しており、170cmくらいの大人までなら問題なく座れる広さを確保しています。
上級グレードに設定されるセパレートタイプの2列目シートは、SUVのリアシートとしてはかなり高級な作りです。CX-8にも設定があったシートタイプですが、質感はさらに向上しているようです。シート表皮にはレザーが使用されていますので、高級志向のユーザーも満足できるでしょう。
それぞれのシート選択は、グレードによって異なっています。グレード構成はパワーユニットの種類によって大きく3つに別れていて、ハイブリッドは、3.3Lディーゼルターボ+マイルドハイブリッドと、2.5LガソリンのPHEVの2種類。ICE(内燃機関)のみは3.3Lのディーゼルターボが選べます。各パワーユニットに3~4のグレードが設定されるため、シート選択は少々複雑になっています。
各グレードと2列目シート選択の組み合わせは以下の通りです。
・XD-HYBRID(ディーゼルMHEV)
プレミアムスポーツ……セパレート
プレミアムモダン……セパレート
エクスクルーシブスポーツ……セパレート、ベンチ
エクスクルーシブモダン……セパレート
・XD(ディーゼル)
エクスクルーシブモード……セパレート、ベンチ
Lパッケージ……キャプテン
Sパッケージ……ベンチ
XD……ベンチ
・e-SKYACTIV PHEV(プラグインハイブリッド)
プレミアムスポーツ……セパレート
プレミアムモダン……セパレート
Lパッケージ……キャプテン
以上のように、全体的に6人乗り仕様のほうが多いグレード構成となっています。7人乗り(ベンチシート)を希望する場合、選べるグレードが限られてしまう点は注意が必要です。
■ミニバンの代わりになるか?
3列シートSUVをミニバンの代わりとして購入検討をする人も、最近は多いようです。ミニバンとは3列目の居住性という点で敵うはずもないSUVですが、3列目を常時使用せず緊急用として割り切っている人であれば、十分代わりにはなり得るでしょう。ただし、低床化した昨今のミニバンには室内高の余裕さでは到底敵いません。そういった空間の広さを求めるのであれば、SUVではなくミニバンのほうが満足度は高いでしょう。
SUVがミニバンよりも優れている点は、外観がスタイリッシュな点や優れた走行性能、乗り心地のよさなどが挙げられます。特に、2列目シートの乗り心地でいえばミニバンよりもSUVのほうが上の場合が多くなります。3列目をめったに使う機会がない人にとっては、3列SUVは魅力的な選択肢となるでしょう。
CX-80が懸念されるとすれば、まだ発表されていない価格がどの程度高額になるのかという点、そしてCX-60で散々指摘されてきた乗り心地面の改善がなされているのかという点が気になります。この2点の対策次第では、大ヒット商品にもなる可能性を秘めたSUVです。価格等の詳細情報、そして試乗した際の印象がどうなのか、このクルマが気になる人は今後明らかになる情報をチェックするようにしましょう。
<文=青山朋弘 写真=マツダ>